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 世界と日本のSF大会概史

 各地のコンベンション都市宣言や、コンベンションホールの建設ラッシュ等により、日本でも昨今、コンベンションという言葉が少しづつ定着して来たようです。しかし、各地のコンベンションホールの多くは極めて使用料が高く、企業主催や、資金的に多くのバックアップを得たイベントでないと、なかなかこうした施設を使用する事は出来ません。このため日本では、コンベンションと名付けられたイベントの多くが企業等のバックアップを得たものとなっています。
 日本ではまだ上意下達式のものでしかない、公共機関や企業の冠イベントがほとんどのコンベンションですが、アメリカでは市民の手で結構、当たり前に行なわれている文科活動の一つです。本を読む人、供給する出版者、流通を司る本屋といった人々が集まる本のコンベンション。漫画のコンベンション。化石採掘者から宝飾品ディーラー、鉱物収集愛好家から、化石採取用のハンマーの専門店まで、石に関する人々が何でも集まる鉱物コンベンション。全国のチアリーダーのコンベンション。科学クラブのコンベンション。プレスリーファンのコンベンション。ピザ屋チェーンのオーナーのコンベンション。それを食べるのが趣味の食通達のコンベンション等々、いろんな主義主張趣味性癖を同じくする人々のコンベンションが開催されています。しばらく前の日本のニュースにも何百組もの双児が集まった双児コンベンションの様子が流されたことがありました。
 こういった様々なコンベンション需要を満たすために、アメリカにはいくつも、コンベンションを主要産業とするコンベンションシティが誕生しています。その幾つかは、既に多数ホテルを持ち、外からの客をもてなす事に手慣れた観光都市が、新たな集客を求めて地域ぐるみの施設整備を行なったものです。たとえば、フロリダ州オーランド(ディズニーワールドがあり、元々観光地)。カリフォルニア州サンフランシスコ(大都市)。同じくカリフォルニア州ロサンゼルス郊外アナハイム(ディズニーランドがある)。どこも、公立の大規模なコンベンションホールがあり、多数のホテルがあり、コンベンション以外にも観光や買い物をするスポットがいくつもあり、何よりも、大人数をさばく事に慣れています。
 そして、これは日本にはまずない制度ですが、各ホテルでは、コンベンションの指定ホテルになると、そのコンベンションの会期中、参加者に限り、市価の約半額という大幅なプライスダウンで応じる「コンベンションフィー」という制度が当たり前の事として行なわれており、普通サイズのツインひと部屋に夫婦で泊まって100ドル程にコストを抑えてくれます。

 このような背景を持つアメリカでは、開催する方や参加する方はもちろん、場所を貸す方もコンベンションに慣れており、企業主催の豪華なものから草の根レベルのリーズナブルな集まりまで、様々なコンベンションが開催されております。世界SF大会(ワールドSFコンベンション、ワールドコンと略されることが多い)は、毎年、九月最初の月曜日(アメリカで数少ない祝日の一つのレイバーデー)を最後とする5日間、こうした充実した環境の中で、老若男女約4〜8千人を集めて開催されています。この中では、科学者を招いての宇宙開発や生命体についてのレクチャーがあったり、参加者を絞った作家とのディナーパーティーがあったり、コスプレ・ショーがあったり、プロによるSFアワードであるネビュラ賞、アマチュアによる人気投票のSFアワードであるヒューゴー賞の発表・授与式等、様々な企画が林立しています。

 一方、日本SF大会は、この世界SF大会にならい、日本のSFファンたちを一堂に集めて1962年に第一回大会を開催し、その後、年次大会として毎年夏に開催され続けています。2001年夏には、記念すべき第40回大会を迎えます。日本SF大会は、さすがに開催期間5日間というようなことは不可能で、多くの場合が土〜日を使った一泊二日というパターンですが、折角日本全国から集まったファン同士がゆっくり出来るように、この二日に前泊・後泊を組み込んで、長期のんびりと滞在できるオプションを用意する所もあります。さらに進んで、二泊三日の大会を企画することも、過去数回試まれています。

 SF大会は誰が運営しているのか

 日本SF大会の運営は、各地の有志による実行委員会が行ないます。どこの地方に任せるかは、2年前に、日本SF大会内で開催される日本SFファングループ連合会議の総会の席上で、立候補した候補グループの中から、連合会議を構成する各ファングルーブから集まった代議員たちの投票によって決定します。

 例えば2003年の第42回大会を目指す私たちのT-con 2003は、次のような手順を踏んでいます。

 ○2000年の第39回大会のおりに、日本SF大会参加者全員の投票という異例の方法によって第42回大会運営の優先権を獲得。
 
 ○2001年の第40回大会の日本SFファングループ連合会議総会の席上で、正式に日本大会として承認。

 つまりこれを読んでいるあなたでも、連合会議に承認されさえすれば、未来のSF大会の実行委員長になることが可能なわけです。

 日本SF大会以外のコンペンション

 今日の日本SF大会は、おおむね1000〜2000人の参加者を集めています。しかし、SFファンの集まるコンベンションは、それだけではありません。
 日本各地のファングループが開催する、小規模なコンベンションが、年間10件から、数え方によっては30件近く開催されています。(サークル内だけに告知するもの等を含めると、もっと多いかもしれません。)小規模といっても、40人を割るようなものから、300人を越える大人数のものまで、様々です。こうした、コンベンションは、ローカルコン(地方コン〕と呼ばれています。日本SF大会が総てを揃えた大型ショッピングセンターなら、地方コンは面倒見が良くて愛想がいい店主が客一人一人の顔と好みを覚えてくれる個人商店のようなものです。その、アットホームな雰囲気に浸りたくて、SFファンの中には、毎年、決まった時期にお気に入りの地方コンに参加することを楽しみにしている人が少なくありません。また、日本SF大会では不可能なほど、一つの専門分野に特化できることも、ローカルコンの愉しさの一つです。ある作家のファンだけの集まり。ある作品のファンしか来ないコンベンション。このジャンルの同好の士の合宿。年に一度きり、場合によっては数年に一度きり、そういう密度の濃い日を楽しむ。体力の続く限り、気力の保つ限り、同好の士と心ゆくまで語り明かす歓び。それが、地方コンの楽しみです。


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